思いを受け継ぐ
あれから1年が経ちました。
いつも以上に アッという間の1年でした。
つい先日のことのような気がします。
生ききった人にとっても
生かされた人にとっても
否応なくねじ伏せられた想いを
一瞬にして奪い去られた願いを
思い出として語ることができるまでには
まだまだ時間が足りないと思います。
けれども、間違いなく1年が経過しました。
あの日までと同じように
いつも通り時間は通り過ぎていきます。
まったく何もなかったかのように…
ところが、
まだ何も変わっていないようでいても
よく注意して見てみると、
少しずつ… ほんの少しずつではありますが
動き始めているところを感じることもできます。
人は 大自然の前では
全く歯が立たない弱い存在です。
しかし、それと同時に
とてもタフな存在だと思います。
それは きっと!
この世に生まれてくるだけの価値があるから。
この世で生きていくだけの価値があるから。
2011年3月11日・東日本大震災の
すべての犠牲者と被災者の方々が
一日も早く安心できますように…
心から お祈り申し上げます。
今日は一日中、
そんな祈りや願いを込めて
特別番組が各局で放送されています。
あの日をふり返ったり
犠牲者を追悼したりすることは
節目の日としての大切なことだと思いますが
あまり今日はテレビを視る気になれませんでした。
そんな中、ふと目にとまったのが
夕方に放送されていたKHK・Eテレの番組、
シンサイミライ学校いのちを守る特別授業~
“釜石の奇跡”片田敏孝教授と子どもたち でした。
NHK大阪では
地震、津波、台風。相次ぐ自然災害から、
どのようにして命を守るのか、
いま注目される防災教育の実践と
分かりやすい解説を紹介するサイト
「シンサイミライ学校」
をスタートさせました。
その最初の授業は
群馬大学・片田敏孝教授による“いのちを守る特別授業”。
小中学生3000人が大津波から避難した
岩手県釜石市の“奇跡のサバイバル”を生みだした
片田教授の防災授業を和歌山県田辺市の中学校で実施。
その模様を紹介した番組です。
その中で、片田教授が特に熱く語った
「釜石で伝えた 避難3原則」が印象的でした。
- 想定にとらわれるな
- 最善をつくせ
- 率先避難者たれ
片田教授は防災の専門家として
これらを市民に伝える活動をしています。
大人たちがあまり興味を示さない中、
小中学校での防災授業というカタチで
多くの子どもたちに「避難3原則」を啓蒙してきました。
番組では、
非被災地の和歌山での授業でしたが
教える先生、学ぶ生徒、共に真剣そのものでした。
他の番組が、
被害の大きさや衝撃を象徴する映像や
犠牲者・被災者の辛く悲しくやるせない状況を
徹底的に再現して振り返る中にあって、
この番組は
冷静に、実直に、防災の肝を報道していました。
先の震災では、
この3原則に倣って
小中学生が指示を待たずに
幼い子らに気遣いをしながら率先避難し
さらに通常の避難場所に拘ることなく
その場の状況を判断してさらに高い土地へ避難。
その結果、多くの学生・児童が死を免れました。
まさに、不幸中の幸いでした。
今後、どこで大地震が起こっても不思議ではない
日本に住む者として、今、最も大切な情報です。
そういう意味で、この授業は
たいへん意義深い番組だと感じながら視聴しました。
冷静に、実直に、防災を説く片田教授の語り口は
授業が進むにつれて、熱いものに変化していきました。
そして、
あれだけ多くの子どもたちの生命を救ったことに対して
「取組みとしては失敗だった」と静かに語っていました。
もっと巻き込めたはずだ
もっとできることがあったはずだ
そうすれば、もっと救えたはずだ
強い自責と悔恨の念があったのでしょう。
そこに理論を語るだけの研究者の姿はありませんでした。
悲しげに、それでいて力強く語る様子を見て
心の底から湧き出てくるものを感じました。
自分たちは防災の専門家ではないが
ここで学んだ「避難の3原則」なら
実践することができるはず。
身近な人たちに伝えることができるはず。
このような大切なことを日頃から
専門家やマスコミが
冷静に、実直に 伝え続けること。
未来の日本を担う子どもたちはもちろん、
今、責任ある立場である大人たちが
冷静に、実直に 学び、実践すること。
それらを通じて、
もう これからは あんな被害を出さない…
もう これからは あんな犠牲を払わない…
みんなで生き続けていくという意志を強く掲げ
永代にわたって伝え続けていくことは
一番の供養になるような気がしてなりません。
生命を犠牲にした人たち、
生命を守りきった人たち、
生命を守ろうとした人たち、
彼らの思いを無にすることのないよう
最善をつくして受継いでいきたいと思います。
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